Skip to content
Previous Post
望遠鏡
Next Post
鼓動のように

夏の放物線

夏の匂いと歓声の中で 君の手を離れたボール

あの日、空に向けて放たれた

永遠に失われつづける今この瞬間のように

ゆっくりと放物線を描いて、もとの場所に戻ることはない


スタンドの影がグラウンドに伸びる午後

壁に映し出されたその軌跡だけを追って

僕たちは本当の姿を知らずにいる


もしも、見ているものが

ただ光のつくりだした影に過ぎないのだとしたら

真実は知ることの出来ない

この世界の外にあるのかもしれない


ある晴れた日の午後に

ロケットが音をたてて空へと消えていく

手を伸ばしても届かない場所を目指して


この世界がもし広がり続けているのだとして

それは真理から遠ざかっているということなのだろうか?


そして僕は今、この瞬間に投げかける

かつて空へと放たれたボールのように

誰にも届かないかもしれないこの声を

いつかどこかで誰かが受け取ってくれることを信じながら



Share this post on: