夏の匂いと歓声の中で 君の手を離れたボール
あの日、空に向けて放たれた
永遠に失われつづける今この瞬間のように
ゆっくりと放物線を描いて、もとの場所に戻ることはない
スタンドの影がグラウンドに伸びる午後
壁に映し出されたその軌跡だけを追って
僕たちは本当の姿を知らずにいる
もしも、見ているものが
ただ光のつくりだした影に過ぎないのだとしたら
真実は知ることの出来ない
この世界の外にあるのかもしれない
ある晴れた日の午後に
ロケットが音をたてて空へと消えていく
手を伸ばしても届かない場所を目指して
この世界がもし広がり続けているのだとして
それは真理から遠ざかっているということなのだろうか?
そして僕は今、この瞬間に投げかける
かつて空へと放たれたボールのように
誰にも届かないかもしれないこの声を
いつかどこかで誰かが受け取ってくれることを信じながら